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2025.09.30

社長ブログ202509📕「ヴィンランド・サガ 完結!」

社長ブログ202509📕「ヴィンランド・サガ 完結!」

2005年から20年間連載されていた幸村誠さんの11世紀の北欧、グリーンランド人によるアメリカ開拓事業を下敷きとした物語「ヴィンランド・サガ」がついに完結しました。歴史モノのマンガ好きなもので、ずっと単行本で追いかけていましたが、ついに完結したかという感じです。感無量です。

いや、本当に凄い作品でした。単純に画力やストーリーテリングという点でも超一流でしたが、特にテーマ性と構成が他に類を見ない傑作だったと思います。

物語の前半部分は、ヴァイキング達の戦争を主たる舞台にした歴史アクションものという建付けで、殺された父親の復讐に燃える主人公トルフィンの孤独な戦いを描く物語でした。この前半も面白かったのですが、本当に凄かったのは後半で、復讐の過程で殺めてきた数多くの人たちの命と初めて向き合い、その罪の意識に酷く苛まれながらも、以降は非戦、非暴力を誓い「戦争も奴隷もない平和な国」を実現するために大西洋を越えてアメリカ大陸への開拓事業を始めるという展開になります。「どこまでも非戦を貫けるのか?」ということをテーマに、戦えばだれよりも強く、何でも解決できそうなトルフィンが決して戦わない道を探し続けるという、平和とは、非暴力とは何かということを徹底的に追及する物語でした。

もちろん決して理想論で物事が上手くいくという話ではなく、トルフィンが非戦を貫こうとする中、同じ理想を持っていたはずの仲間、エイナルやヒルド、コーデリアでさえ「仕方ない」という理由で戦いに身を投じてしまうという、非暴力の難しさが描かれています。

トルフィンが父親からかけられた言葉「お前に敵はいない」という言葉が作品中何度も反復されますが、今の日本や世界を見ていると、敵を作りだそうとする言説に溢れているように見えます。そういう意味で、今の時代にとって非常に重要なテーマが語られている作品でした。ぜひとも広く読まれて欲しい作品です。 ところで本作では最終巻でカルリが「次はきっとうまくやる」と誓うシーンがありましたが、幸村さんの前作の「プラネテス」でもロックスミスが「次は失敗しません」と宣う印象的なシーンとオーバーラップする(だいぶニュアンスは違いますが)感じで良いシーンでした。今から次回作にも非常に期待しています。

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