社長ブログ2405🌷
~先月の続き~
この二面性も芹沢社長の魅力ですが、一番の魅力は彼が大きな挫折を抱えながら生きているという部分です。芹沢社長はもともとサラリーマンとして働いていて、自分の理想のラーメンを売って生きていくことを夢見て起業しました。そして安定的な職業を手放し、離婚も経験し、髪の毛も失いながら、鮎の煮干しをふんだんに使った理想のラーメン「淡口らーめん」を完成させます。
このラーメンはまさに芹沢社長の理想を実現した傑作ともいえるラーメンでした……が、残念なことにこのラーメンは顧客に全く受け入れられませんでした。芹沢社長のラーメン店は連日閑古鳥が鳴き、経営は日々苦しくなり、廃業寸前まで追い込まれてしまいます。
そんなある日、騒がしい三人組の客に「この店のラーメンはスープが薄っぺらくてコクがない」などと言われてキレた芹沢社長は、ヤケになって淡口らーめんにラード(油)をたっぷりぶち込んで出したところ、これが驚くほどの大好評で、このラーメンを元に「濃口らーめん」という新メニューを開発するに至りました。
芹沢社長にとっては「濃口らーめん」は繊細な鮎の風味がラードで吹き飛んでしまっているような理想とは程遠いラーメンだったのですが、皮肉なことにこれが大当たりして、店は一気に息を吹き返し一躍行列ができる有名店にまで上り詰めます。こうして、芹沢社長は本当に作りたいもの(淡口らーめん)を作り続けるために、別に売りたくないもの(濃口らーめん)を売り続けるというジレンマを抱えながら経営を続けていくことになったのでした。
この話は本当に自分が売りたいものとか作りたいもの、本当に社会に対して提供したい価値が必ずしも事業を継続できるだけのお金を産んでくれるとは限らないというお話ですね。経営者の視点で見ると非常にわかりみが深いです。芹沢社長のエピソードには他にも共感できる、勉強になるポイントがたくさんあって非常に面白いです。
最新シリーズの「らーめん再遊記」では、芹沢社長が『中年の危機』を迎え仕事への情熱を失ってしまう話や、これまでの人間関係の清算のような終活的なエピソードも増え、中年男性の必読書ではないかと勝手に思っています。特に3~4巻のラーメン自販機のエピソードは泣けました。別にラーメン好きでなくとも学びの多い作品なので、ぜひ興味を持たれたら読んでみてください。